お地蔵さんの寺子屋だより

船橋地蔵院副住職・八千代地蔵院住職 英昭 監修

生かされている命

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硫化水素による自殺が全国各地で相次いでいる。体調を崩したり避難を強いられるなど周辺の人が巻き添えとなるケースも目立ち、深刻な問題となりつつある。行政の取り組みも始まったが、「自殺の連鎖」を止めるには、家族など周囲の人たち、自殺に使われた商品を製造する企業など総合的な取り組みが必要だ。

 硫化水素自殺は、1月ごろからインターネットの掲示板で手口が紹介されるようになった。3月ごろから自殺件数が増え、メディアも大きく扱うようになった。4月に入って激増し、中旬以降はほぼ連日発生。日本自殺予防学会は4月18日、報道機関に▽詳しい方法を紹介しない▽相談機関などについての情報提供を併せて行う――などの配慮を求める緊急アピールを出した。

 一昨年10月に国立精神・神経センター内に開設された自殺予防総合対策センター(東京都小平市)は「今回はメディアにも比較的慎重な扱いが見られたが、はるかに早くインターネットを介した情報が広がった」と指摘する。しかし、自殺サイトの閉鎖や書き込み者の特定は、表現の自由の問題もあり簡単ではない。また、 高知県の市営住宅で自殺した生徒(14)は、硫化水素による自殺方法を「テレビで見て知った」と書き残していた。生徒の自宅にはパソコンなどの機器はなく、ニュースなどから知識を得たとみられるという。

 ◇サイン気付いて、自殺の連鎖はどうすれば止められるか。国を挙げての対策が成果を上げたフィンランドでは、遺族からの大規模な聞き取り調査の結果、自殺者の85%が精神疾患状態にあったとされる。国の自殺総合対策大綱は「自殺は個人の自由な意思や選択の結果ではなく、心理的に追い込まれた末の死である」と指摘する。「摂食障害やアルコール依存、睡眠障害などの身体症状が必ずある。周囲が受け止めれば防げる場合もある」という。

 硫化水素(H2S)は無色で、腐った卵のようなにおいのするガスで脳が酸素を利用するために必要な酵素の働きを阻害し、酸欠と同様の状態に陥り死に至る。においは刺激が少ないため我慢しやすく、脱出などが遅れがち。100ppmを超える濃度で30分を過ごすと、自力で脱出できない状況になる。毒性は強く、800ppm以上の濃度のガスを吸入すると即死する。

内藤裕史・筑波大名誉教授は「他の有毒ガスに比べ影響が出るのが非常に早い。においを感じたら、現場に近づいてはいけない。硫化水素は空気より重く、発生階の下の人も巻き添えになる。床にたまったガスにも注意が必要だ。救助に行った人の2次、3次被害も多いので、発生源には絶対に近づかないという原則を周知すべきだ」と警告する。

 ◇厚労省、業界に注意喚起通知・・・・ 硫化水素による自殺で市販の医薬品や洗剤が使用されていることを受け、厚生労働省は4月25日、日本薬剤師会など薬局・薬店の業界4団体に対し、注意を促す文書を通知した。客に購入目的を聞いたり、硫化水素を発生させる医薬品や洗剤をセットで購入していないかなど注意するよう依頼する内容という。ただ、同省は「毒物や劇物でない限り、客の身元確認を求めることまではできない」としている。
(提供 毎日新聞社)
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